胃、十二指腸潰瘍による穿孔性腹膜炎の治療

胃および十二指腸潰瘍は消化性潰瘍とも呼ばれ、多種多様の原因で発症し、最近ではピロリ菌の関与が証明され、ピロリ菌に対する除菌療法が保険適応されるようになりました。もともと消化性潰瘍は内科的に治療できる病気であり、近年のH2ブロッカーおよびプロトンポンプインヒビター(強力な胃酸分泌抑制の薬)などの抗潰瘍薬の発達に伴いほとんどの潰瘍は保存的治療(手術しないで薬などで行う治療)で治るようになりました。

胸部X線で穿孔の診断内視鏡にて十二指腸潰瘍の穿孔と診断
(左:胸部X線で穿孔の診断。 右:内視鏡にて十二指腸潰瘍の穿孔と診断)

このような縮小手術は最近の腹腔鏡の技術で可能となってきており、この1-2年で全国の多くの施設で行われ始めています。腹腔鏡下胃手術(2)でご紹介しました吊り上げ(Lesion Lifting)法や胃内手術法ではリンパ節の切除はできませんが、そのリンパ節郭清を腹腔鏡下手術で行うわけです。リンパ節と胃を切除した後、腹壁を約5cm切開して切除した病巣を体外に摘出し、胃と十二指腸をつなぐ必要があります。完全に腹腔鏡でする手術を腹腔鏡下手術、少し腹壁を切開して行う手術を腹腔鏡補助下手術と呼ばれています。ですからこのような手術は腹腔鏡補助下胃切除術といいます(LADG: Laparoscopy assisted distal gastrectomy 等)。

昔より消化性潰瘍の手術治療の適応は、絶対的適応として

  1. 出血
  2. 穿孔
  3. 幽門狭窄

であり、
相対的適応として

  1. 難治性
  2. 内科的治療のできない場合

とされてきました。手術治療というのはほとんどの場合広範囲胃切除という胃を約2/3切除する方法でした。しかし潰瘍の出血は内視鏡による止血剤の局所注射やクリップで出血血管をつまんでしまう技術の進歩により高い止血率が得られるようになり、また幽門狭窄も保存的治療によりほとんど見ることすらなくなりました。

穿孔部穿孔部の縫合
(左:穿孔部 右:穿孔部の縫合)

しかし長年、穿孔性腹膜炎はすぐに手術され、しかも広範囲胃切除が行われてきた。多くの穿孔性潰瘍はピンホールといわれる小さな穴で、穿孔部を閉鎖し術後内科的治療をきちんと行うことにより胃を切除しなくても治癒できることがわかってきました。また穿孔してもれる胃や十二指腸液は細菌も少ないため、条件が整えば全く手術しないでも治癒できるケースも見られるようになってきました(保存的治療)。

腹腔鏡技術の進歩とあいまって穿孔性潰瘍が腹腔鏡により穿孔部を閉鎖し、腹腔を洗浄、ドレナージ(廃液すること)することにより開腹手術と同様の治療性成績をあげるようになってきました。手術侵襲が小さく、入院期間が短いため多くの施設で本術式が行われています。しかし唯一の欠点は「簡単に治るため患者の病識が軽く術後の内服治療を中断する患者が多い」という裏話もあります。

年次別症例数