人工関節

痛みの少ない人工関節置換術を実践しています

長浜赤十字病院 整形外科医長 川口誠司

変形性関節症について

変形性関節症は関節痛の代表的疾患です。加齢とともに関節の痛み、腫れ、動かしにくさ、変形などが現れてきます。この発症には様々の要因が関わりますが、一般に加齢、肥満、遺伝的素因、関節の外傷、関節への過度のストレスなどがあります。

治療は、症状の軽減と関節機能の維持・改善を目指します。まずは保存療法と言って手術以外の方法で症状の軽減を図ります。具体的には鎮痛剤を使用したり、関節内注射をしたり、リハビリをしたり、装具を作製したり、減量をしていただいたり、などです。

それでも痛みが強く、生活に支障がでるようであれば手術療法を考慮します。人工関節置換術という、関節の痛みを発している部分を切除し、もともとの正常な関節を模して作られた人工関節を設置する、という手術です。手術手技、インプラントの進歩により、術後成績は年々良くなっており、それに伴い手術を選択される患者様も増加しております。

当院の人工関節置換術の特色

人工関節置換術は一般的に術後の痛みが比較的強いものですが、当院では人工膝関節・股関節置換術ともになるべく術後の痛みが少なくなるように心がけております。長く使う人工関節ですので長期成績がまず一番に大事であるのは当然のことですが、だからと言って術後に痛みが強くてもよいという理由にはなりません。

人工膝関節置換術では①筋肉を切らない手術法(Under vastus approach)、②超音波装置を利用した神経ブロック、③関節周囲多剤カクテル注射、④可能であれば痛んだ部分だけを置換する単顆置換術、を行っております。以前は人工膝関節置換術を受けた後は強い痛みに苦しまれる患者様が多かったのですが、当院では手術翌朝の痛みが全く無いという患者様も少なくありません。神経ブロックの精度はかなり高くなっており、その施行件数は県内随一ではないかと自負しております。単顆置換術は全置換術に比べて、傷は小さく、術後の膝の動きがより自然であり、可動域もよく、早く退院できるというメリットがありますので、当院ではその割合を徐々に増やしております。

人工股関節置換術に対しても、同様に筋肉を切らない手術法(MIS-ALSもしくはDAA)がほとんどの患者様に可能です。従来は人工関節を入れるためには様々な筋肉を切る必要がありました。そのため術後の痛みは強く、手術直後は脱臼に特に気をつける必要がありましたし、筋力の回復のためにリハビリに時間を費やす必要がありました。近年、全国的にも増えているMIS-ALSやDAAではありますが、現状のところはどの施設でも可能というわけではありません。この手術法を滋賀県ではさきがけて2014年から開始しましたが術後成績は安定しております。また高齢者に多い大腿骨頚部骨折に対してもこの手術法をすることで早期の回復が可能となっております。

人工膝関節「全」置換術の具体例

80代前半の女性です。当院では患者様の負担が少ないように、原則として人工膝関節置換術の麻酔は全身麻酔ではなく下半身麻酔(と軽くウトウトする薬の併用)で手術をしております。いわゆるO脚であり、膝の内側の軟骨が特にすり減っています。

人工膝関節置換術 術前人工膝関節置換術 術前

人工膝関節は骨セメントで固定するのが現在の主流ではありますが、当院ではセメント無しでの固定でも良好な長期成績を誇る人工膝関節を主に使用しております。セメントで固定する際に血圧の変動などが起こることがありますが、セメントを使用しないことで心臓が弱い患者様にもより安全に手術を受けていただくことが可能です。

人工膝関節置換術 術後人工膝関節置換術 術後

人工膝関節「単顆」置換術の具体例

80歳代の女性です。長らく膝の痛みに苦しんでおられましたため人工膝関節置換術を希望されました。幸いにも膝の内側だけの痛みでありましたため「単顆」置換術を行いました。「全」置換術と比較すると、創部は小さく、術後の痛みも少なく、回復が早いという特長があります。

人工膝関節置換術 術前人工膝関節置換術 術後人工膝関節置換術 術後

90代の女性です。膝関節痛があまりにも強く自宅内でもほとんど這って生活をしておりました。超高齢の患者様にも侵襲の少ない「単顆」置換術であれば比較的安全に行うことができます。「単顆」置換術には大きく分けてmobile typeとfixed typeがありますが、当院では患者様の状態によって使い分けをしております。

人工膝関節置換術 術前人工膝関節置換術 術後人工膝関節置換術 術後

日本人の変形性膝関節症はほとんどがO脚であり、膝の内側が主に痛んできます。そこで悪い内側のみを人工関節にするというのは非常に効率の良い治療となります。膝の曲げ伸ばしがしっかりとできている、膝の前十字靭帯が残っている、変形が内側のみに限局している、などという一定の条件を満たさなければなりませんが、当院では可能であればこの「単顆」置換術を選択しています。2014年度には国内の人工膝関節置換術が83267件されている中で「単顆」置換術は7208件とまだ少ない(矢野経済研究所調査)ですが、近年この手術の良さが認められ手術件数は徐々に増える傾向にあります。

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人工股関節置換術の具体例

70代前半の男性です。10年ほど前から左股関節痛があり悪化傾向でした。左の術前レントゲンをみると軟骨がすり減って骨が変形しています。右が術後レントゲンです。痛みを発する部分を取り除き人工股関節を入れました。

人工膝関節置換術 術前人工膝関節置換術 術後

筋肉を切らない手術方法のため、術後の痛みの訴えは無く、創部に違和感と動かしたときのだるさがあるのみでした。動画は手術前日と術後6日目の歩行です。

人工関節外来をしています

金曜日の午前中に人工関節外来をしております。日進月歩である人工関節技術を存分に取り入れ、よりよい治療を提供できるようにしたいと思っております。人工関節外来と称してはおりますが、人工関節以外の治療法がより良いと思われる場合には、然るべき対応をさせていただきます。また保存療法(手術ではない治療法)の相談にも乗ります。関節痛に悩まれる方は、是非一度、お気軽に人工関節外来を受診してみて下さい。